李柏尺牘稿(重要文化財)


A文書    B文書


●概要

西域文化資料 538 A文書:23.8×39.7cm B文書:23.8×28.5cm
写本 ローラン(楼蘭) 出土 328年

 大谷探検隊第二次隊員の橘瑞超氏が、1909年ロプ湖北岸のローラン古址より発掘・将来した文書。本資料は、一般に「李柏文書」と呼ばれ、首尾完存のA・B両文書と39の断片群とで構成されている。A・B両文書よりその内容を見ると、前涼国の使者が西域諸国を歴訪するについて、西域長史李柏が符太(B文書は符大)にもたせた、訪問先の各国王に宛てた書状の草稿と考えられている。
 また本資料の縦の長さは、漢代の一尺に相当し、当時使用されていた木簡の長さと同じである。書写材料として、紙が普及して行く極めて初期の遺品であり、更に、書写年代も前涼太元5年(328)と考証されている。紙を使用して筆記された首尾完結した書状で、古代中国の文書様式を明らかにした資料として、昭和28年(1953)に国の重要文化財に指定された。


●分析結果

 用紙は、典型的な中国初期の紙である麻紙とされているが、麻紙は必ずしも、植物学的な麻(大麻: Cannanbis sativa)製に限らず、苧麻(Boehmeria nivea)製もそう呼ばれている。 「李柏文書」は単繊維試験では、用紙は苧麻と推定されたが、全て苧麻かどうかはなお分析を必要とする。大谷コレクションの経典用紙にもしばしば、大麻紙と苧麻紙の2種類が見つかるが、判別は困難である。


保存修理(坂田墨珠堂)

 日本に残る最古の紙である4世紀の「李柏文書」は国の重要文化財に指定されているが、巻物仕立のため裏面が不明であるばかりでなく、何度もほぐす間にかえって擦り切れて損傷が進んだ。そこで、日本に渡ってきた折に行われた表装を取り除き、当初の姿に戻す修復作業が滋賀県大津市の国宝修理工房である坂田墨珠堂で行われた。本展観では、初めて一般にその過程をここに公開する。


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